小端を仕上げる その2 May.01,2003



小端の仕上げには蜜蝋を使っています。
ある程度満足できる仕上がりにはなるのですが、
蜜蝋はあまり硬くないので、
鞄を何かにぶつけたときなどに、小端の部分に簡単に傷がついてしまいます。
また、あまり硬くないくせに脆いので
革が折れ曲がる部分の小端などではひび割れしてしまいます。

そこで、手持ちの松脂やカルナバ蝋と蜜蝋を混合して
もう少しいい具合のものができないかと試してみました。

下の写真はカルナバ蝋です。



カルナバ蝋はとても硬いので、
このまま小端仕上げに使っても、溶かし込んだ後で磨くことができません。
また、とても脆いので、やはりこのままで使うわけにはいかないでしょう。

そこで、まず松脂とカルナバ蝋を混ぜてみました。
次の写真は松脂50%、カルナバ蝋50%の割合で混合したものです。



蜜蝋に松脂を混ぜると粘りが出るので、
カルナバ蝋ではどうかなと思ってやってみたのですが
これでも硬すぎて全然だめです。

そこで次は蜜蝋とカルナバ蝋を混ぜてみました。
左の写真が蜜蝋70%、カルナバ蝋30%で、右の写真が蜜蝋90%、カルナバ蝋10%です。

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蜜蝋100%のものと比べて硬さが増している代わりに
ちょっと脆さが出てきているところが気になりますが、
これら2種類と、蜜蝋100%のもの、蜜蝋50%、松脂50%の割合で混合したものとを使って
実際に小端を仕上げて比べてみることにします。

比較のためにざっと仕上げただけなので
小端には色もささず、簡単に磨くだけの仕上げをしています。
それぞれの写真には、とても硬いサドルレザーが下側に、
少し柔らかめのオイルレザーが上側に写っています。
また、左の写真が仕上げた状態で、右の写真はそれを折り曲げたところです。

まず最初に蜜蝋100%で仕上げたもの。
折り曲げたところが少しひび割れています。

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次は蜜蝋50%、松脂50%の割合で混合したものです。
折り曲げてもひび割れしにくいのですが、
少しにちゃにちゃした感じになっています。

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蜜蝋90%、カルナバ蝋10%の割合で混合したものです。
折り曲げたときにひどくひび割れてしまいました。

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蜜蝋70%、カルナバ蝋30%の割合で混合したものです。
この場合は、磨いているときに少し革が曲がっただけで
ひび割れを起こしてしまいました。

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硬さを求めてカルナバ蝋を混ぜることを考えたのですが、
実際に小端に溶かし込んだ状態では、あまり差を感じることはできませんでした。
その反面、脆さが災いしてひび割れしやすくなってしまい、
結局、カルナバ蝋を小端仕上げに使うのは失敗だったようです。



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