小端の仕上げや、麻糸の縫製前の処理に蜜蝋を使用するとき
小端のひび割れのしにくさや硬さの調整、糸のゆるみ止めの効果を求めて
松脂を混合して使用します。
そんな松脂について調べてみました。
松脂はその名からわかる通り、松に含まれる樹脂酸を精製したもので
常温では淡黄色や黄褐色の塊をしており、
ロジン(Rosin)、コロホニウム(Colophony)、チャン、などと呼ばれています。
また、琥珀は松脂が化石になったものです。
製造方法の違いにより下記の3種類に分かれています。
1. ガムロジン Gum rosin
松の幹に傷をつけて生松脂を採取し、水蒸気蒸留して
テレピン油(Turpentine oil)を除いて得られる樹脂です。
中国が最大の生産国となっています。
2. ウッドロジン Wood rosin
伐採後10年以上経過した松の根を
チップ状にして溶媒で抽出し、
テレピン油を溶媒分離して得られる樹脂です。
3. トール油ロジン Tall oil rosin
クラフト法によって松材からパルプを作る行程で
副産物としてできる粗トール油を
減圧水蒸気蒸留して分留し、得られる樹脂です。
米国が最大の生産国です。
全世界の松脂生産量は年間約100万tonで、中国が4割、米国が3割を占めており、
その内訳はガムロジンが約6割、トール油ロジンが約4割で残りのわずかがウッドロジンだそうです。
松脂(樹脂酸)は一般的に
C20H30O2
分子式で表わされ、
代表的なアビエチン酸をはじめとして、ネオアビエチン酸、レボピマル酸、ヒドロアビエチン酸、
ピマル酸、デキストロピマル酸など10種類以上の異性体が知られています。
性状は下記の表のようになっており、アルコールやテレピン油によく溶けます。
酸 価 | 155 〜 175 |
けん化価 | 167 〜 185 |
ヨウ素価 | 80 〜 220 |
融 点 (℃) | 120 〜 135 |
軟化点 (℃) | 70 〜 80 |
引火点 (℃) | 187.8 |
比 重 | 1.045 〜 1.086 |
一般的な用途としては、使用量の多いものから
製紙用サイズ剤(にじみ止め剤)
合成ゴム用乳化剤
印刷用インクの原料
塗料、接着剤の原料
などが挙げられますが、その他にも
化粧品、医薬品、洗剤、はんだのフラックス
石けん、染料、農薬、乾電池・・・
と列挙すればきりがないほど多くの用途があります。
野球の投手が使用するロジンバッグは
炭酸マグネシウムに松脂などを混合して作られたものですし、
バイオリンなどの弦楽器も
弓に松脂を塗ることによって初めて美しい音を奏でることができます。
ろうけつ染では防染剤として蜜蝋、木蝋を使用しますが、
ひび割れの具合を調整するために松脂をそれらの蝋とともに混ぜて使用します。
これらの、すべり止めやひび割れ防止を目的とした松脂の使用方法の中に
小端の仕上げや麻糸の前処理に使える大きなヒントが見えるような気がします。
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