麻 糸 Mar.15,2002



縫い糸として使用する麻糸ですが、
張りがあって毛羽立ちの少ないラミー(写真左)と
繊細な感じで、縫う時の毛羽立ちも多いリネン(写真右)とを較べてみても
同じ麻糸と言ってしまうにはあまりにも違いすぎる気がします。

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そこで調べてみると、
麻の種類には
苧麻(Ramie)、亜麻(Linen)、大麻(Hemp)、黄麻(Jute)、
洋麻(Kenaf)、マニラ麻(Abaca)、サイザル麻(Sisal) ・・・・・
と20種類近くのものがありました。
その中でも代表的な物が苧麻と亜麻で、
家庭用品品質表示法でも「麻」とひとことで呼べるのは
苧麻と亜麻に限られています。

縫い糸として通常使用するのもラミーとリネンですから、これの比較をしてみることとします
表1に両者の繊維の特性をまとめてあります。
また、表2に他にも縫い糸として使用することのある綿、ポリエステルとともに
各繊維の物理的特性をまとめました。

ラミーとリネンはまったく別の植物からできています。
ラミーは亜熱帯から熱帯の地方で栽培される いらくさ科の多年草で、
リネンは寒冷な地方で栽培される亜麻科の一年草です。
両者とも麻としての共通の優れた特性をそなえていますが
ラミーは太く長い繊維で、天然繊維の中で最も強度があります。
それに対してリネンは細く短い繊維でしなやかですが、
そのせいで縫う時に毛羽立ちが多いのでしょう。



表1 ラミーとリネンの繊維の特性

ラミーリネン
名称Ramie
苧麻(ちょま)
からむし
まお
Linen
亜麻 (あま)
種別いらくさ科
(多年草)
亜麻科
(一年草)
産地ブラジル
フィリピン
マレーシア
中国
ロシア
ポーランド
フランス
チェコ
ルーマニア
ベルギー
中国
単繊維長さ (mm)20 〜 20020 〜 30
単繊維太さ (μm)42 〜 6613 〜 31
単繊維平均断面積 (μ2)815184
断面積比 (%)膜壁95.898.7
中空孔4.21.3
重合度26602190, 2390, 2420
結晶化度 (%)88 〜 90(88)
配列度 (%)79±782±8
傾角 (deg)3.5±1 (S撚)5.5±3 (S撚)



表2 各種繊維の物理的性質

ラミーリネン綿
(アプランド)
ポリエステル
(フィラメント 普通)
引張強さ
(g/D)
標準時6.55.6 〜 6.33.0 〜 4.94.3 〜 6.0
湿潤時7.75.8 〜 6.63.3 〜 6.44.3 〜 6.0
乾湿強力比 (%)118108102 〜 110100
引掛強さ (g/D)9.38 〜 9-7.0 〜 10.0
結節強さ (g/D)54.5 〜 4.8-3.8 〜 4.4
伸び率
(%)
標準時1.8 〜 2.31.5 〜 2.33 〜 720 〜 40
湿潤時2.2 〜 2.42.0 〜 2.3-20 〜 40
初期引張抵抗度
(見掛けヤング率)
(g/D)185 〜 405150 〜 26568 〜 9390 〜 160
(kg/mm2)2500 〜 55002000 〜 3600950 〜 13001100 〜 2000
0001.51.51.541.38
水分率
(%)
(20℃, 65%RH)7 〜 107 〜 1070.4 〜 0.5
(20℃,00)31 (100%RH)23 (100%RH)24 〜 27 (95%RH)0.6 〜 0.7 (95%RH)
水浸漬時の断面積増加率 (%)374740-

( 出典 : 麻特性の理論的考察、トスコ株式会社編、1987 )



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